第4回の前半は歯周外科について、まずは歯周治療の歴史を、Ramfjord, Lindhe & Nymanなど巨人達の論文を、歴史的な裏話を交えながら解説しました。一通りマイルストーンたる巨人達の論文を読まれている先生方も、それらの論文の背景となる裏話は興味深かったのではないでしょうか。
その後、歯周外科処置の文献的考察をしていきましたが、平滑面においては、イエテボリのレポートからも、歯周外科処置の術式(軟組織、骨の取り扱い方)にかかわらず、歯面からバイオフィルムを取り除く事ができ、術後の歯肉縁上の感染のコントロールがともなえば、歯周組織の健康を維持できることがわかります。歯周治療において、最も大切なことは術式ではなく、術前からの患者へのモチベーションや、その術中、術後のモチベーションの維持なのかもしれません。
分岐部に関しましては、次回、第5回の講義をお待ちください!
それにしても、これら多くのスカンジナビアの研究では、被験者が長期間(10年以上)にわたりDrop outせずに、研究に参加してくれていることにも驚かされます。システマティックレビューではマスクされてしまう、この様な論文の質も注目に値します。

講義のスライドから
左からヒトに初めて用いられたGTR法の報告をしたイエテボリマフィア、Profs. Nyman, Lindhe, Karring, Rylanderと大学院時代の弘岡先生、若い!
後半は、再生療法についての講義でした。 再生療法を、再生療法の最前線であったスウェーデンへ習いに行くことが、弘岡先生の留学の目的だったため、講義にも熱が入ります。
まずは、GTR法の成り立ちと経緯を、まさにGTR法のど真ん中であったイエテボリ大学に留学し、その隆盛を見ていた弘岡先生ならではの解説でした。GTR法のフォローアップを報告し続けるCortelliniらの論文から、再生療法後のリスクは、定期的に歯科受診しないこと、やっぱり喫煙!であることがわかります。 もともとリスクが高く病気が進行してしまった部位は、決してもとよりリスクが低くなった訳ではないことは肝に銘じなければならないのでしょう。Pini Prato, Cortelliniらの再生療法後30年のフォローアップも紹介されましたが、イタリアでこれだけの長期のフォローアップを実現していることにも、スカンジナビアの影響があるのかもしれません。
GTR法に続いては、EMD法です。エムドゲイン も、まさに弘岡先生の留学時代とリンクしており、現在の再生療法の礎が築かれた時代と言えるのかもしれません。GTR法とEMD法とのコンセプトの違いがわかりやすく解説されました。弘岡先生は世界的にもエムドゲインを使い始めたのが早いので、スウェーデンデンタルセンターでも20年以上の長期症例があります。今回の講義でも、なかなかお目にかかれない再生療法の長期症例を提示してますので、見逃した方は振り返り視聴してみてください。
今回の講義から、重度の歯周病に罹患してしまった歯を残すための先人達の努力を垣間見る事が出来ました。やはり歯医者の使命とは、口腔機能を維持するために、歯を保存するための努力を怠らないことなのかもしれません。

講演前にWHITE CROSS代表の赤司先生とホテルの安物歯ブラシを持ち熱弁する弘岡先生
赤司先生は大学の後輩なので、東北大学1年の頃から知っております。ナイフの様に尖っていた時代に興味がある方はご連絡ください!

講義後、多くの質問が寄せられましたが、残念ながらすべての質問に回答する事が出来ませんでした。
2時間で歯周外科と再生療法を講義しているため、もっと聞きたい事があると思われますが、対面での講演ができる日を待ちましょう!