週末、浜松で日本歯周病学会がありました。
今回のテーマは高齢者の歯周病。歯周病の治療には、患者自身によるプラークコントロールの確立が欠かす事が出来ません。ただ年齢を重ねるにつれ、脳血管障害や認知症など障害を患うリスクは増え、口腔衛生の自己管理が困難になる症例も数多く見られます。患者自身によるプラークコントロールと言う大前提条件が崩れてしまうのです。
歯周病だけでなく、嚥下反射の衰えから口腔内細菌が肺炎の原因となることもあり、全身管理の点からも、口腔衛生の管理の重要性が問われています。
患者の良好な口腔衛生の確立は絶対に必要な事であり、それを誰が、どのように、どのような割合で、どれだけ継続できるのか。それを考えて行かなければならない(米山 武義先生)。
様々な先生方の貴重な講義はどれも気持ちがこもっており、いかにこの重要で難しい問題を解決して行くのか。それを真剣に模索している姿には感銘を受けました。派手な治療法や新しい材料の話はあまりありませんでしたが、最近の学会で一番おもしろかったと感じています、個人的には。
そして、最後の講演は弘岡先生でした。2300人も収容できる会場は人であふれていました。
日本歯周病学会の認定医・専門医・指導医を対象とした教育講演を行う弘岡先生。
会場は3階建ての大舞台でした。
ちょっと脱線しますが、昔、ヒトとネズミの違いに関する記事を読んだ事があります。まあ、全然違うと思いますが、そこで取り上げていた事は、ヒトは情報を後世に伝える事が出来る、という事です。ネズミはその一生のうちに経験した事から様々な事を学習しますが、それが子供に蓄積される事はありません。しかしヒトはそれを後世に残し、積み上げて行く事が出来る、という内容でした。
弘岡先生の講演の内容は再生療法。症例を見せながらその治療のエビデンスを紹介していました。1つ1つの治療には根拠があり、それを証明してくれたのは過去の研究者達であると添えて、文献を解説していました。再生療法により、抜歯適応歯も安定した予後を持って長期に保存出来ることを症例をもって証明していました。
恐らく一番伝えたかった事は、僕たちの先人達はとても偉大で、たくさんの助言を残してくれている。 それを無視せず、学習し、患者にその恩恵を還元し、後世にバトンをつむがなければいけない、という事だったと思います。代診ならでは深読みですが、きっとあたらずも遠からず。
今回のテーマである高齢者の口腔管理は非常に深刻な問題です。解決の糸口が見つけられるのか。過去の研究から、口腔衛生の管理が大切である事はわかりきっています。しかし超高齢社会に入り、先人達も経験した事のないような新たな問題に直面している事は確かです。この問題に取り組む事は今を生きる歯科医療従事者の責務だと感じます。
最後はみんなで記念撮影。壇上に立つとその会場の広さに圧倒されました!