5月5日と6日の2日間、スウェーデンのイエテボリにて開催されたJan Lindhe international symposiumに弘岡先生と弘岡秀明ペリオコースを受講された先生方と参加してきました。
このシンポジウムは歯周病学の世界的権威であり、イエテボリ大学名誉教授であるJan Lindhe先生の名前がついた国際シンポジウムで、3年に1度イエテボリ大学内の講堂で開催されます。
弘岡先生とJan Wennström教授(前歯周病科主任教授、弘岡先生が留学時代大学院の主任をされていました)
5回目となる今回は『Looking to the future of periodontal/implant therapy』 Tord
Berglundh教授が座長を行い、世界各国から総勢13名のスピーカーが講演を行いました。
初日午前の部は『The future of periodontal and peri-implant diseases』というテーマで、将来全身疾患を伴った歯周病やインプラント周囲炎患者が増え、さらに高齢化によって治療がより複雑になっていくだろうとのことでした。
日本ではすでに高齢化社会を向かえており、高齢者がセルフコントロールしやすく、患者・術者ともに管理しやすい口腔内を考えて治療を行っていく必要があると感じました。
すぐさま弘岡先生は休憩時間にスピーカーであるOdd Carsten Koldsland先生と講演内容についてディスカッションをしていました。
また、イエテボリ大学で学位を取得された弘岡先生のもと同窓の先生方が集まり、久しぶりの再会に話が弾みます。
現歯周病科大学院主任のIngemer Abrahamsson先生)
そしてLindhe名誉教授にご挨拶
午後の部のテーマは『The future of periodontal therapy』
4人のスピーカーが歯周治療の将来について講演しました。中でも印象的だったのはUbele van der Velden先生。講演内容は「Has the
dicition on tooth exraction in treatment planning changes over time and will it
change in the future?」インプラント治療が盛んに行われるようになり、治療計画を立てる際の抜歯の基準が変わってきているのではないか、もっと予防や歯周治療で歯の保存に力を入れるべきだと話されていました。
Ubele van der
Velden先生と弘岡先生 ここでもディスカッション。
2日目のテーマは『The future of dental implant therapy』
インプラントに使われる新素材の利点、欠点の話やインプラント治療におけるリスク、インプラント周囲炎への対応などが述べられました。
スピーカーの一人であるGiovanii E. Salvi先生は、講演前に弘岡先生のとこに駆け寄り、「今回はすごいぞ!」と意気込んでいました。
講演内容は、歯周病患者に対するインプラント治療は歯周炎と同様にインプラント周囲炎になるリスクが高い。インプラント周囲炎を予防するためには、事前にきちんと歯周治療を行い、プラークコントロールを徹底させること、インプラント周囲粘膜炎を早期に発見し治療することが重要である。しかし一番の予防法はインプラントを埋入しないことであり、そのために歯の保存に努めるべきだ!というものでした。
これはSDCが考える治療方針と全く同じで、弘岡先生は彼の講演内容に深く共感していました。
Giovanii E. Salvi先生と弘岡先生
そして最後のスピーカーのOlivier Carcuac先生も同じく、インプラント周囲炎の治療はとても困難で治療方法も確立されていないため、予防することが重要であると話されておりました。
後輩のJan Derks先生、Olivier Carcuac先生と
今回のシンポジウムでは、将来の歯周治療とインプラント治療をテーマに行われました。高齢化が進み、全身疾患を持った患者さんが増えていく中で、治療はより複雑になっていくと考えられます。さらに、現在、インプラント周囲炎の確立された治療方法は存在していないため、歯科医師は極力歯を保存するよう心がけ、患者・術者ともにプラークコントロールしやすい口腔内環境を作ることが重要であると学ぶことができました。また、これらのことはすでに高齢化社会である日本において弘岡先生が取り組まれていることと同じであると感じました。
2017年5月30日
スウェーデンデンタルセンター 杉山記