日比谷便り ~スウェーデンデンタルセンター オフィシャルブログ~

患者様、コース受講生、歯科医療関係者への最新情報です。

世界初インプラント周囲炎外科処置後10年の追跡調査結果を抄読しました。

本年度初となりましたジャーナルクラブが開催されました!

久々の対面でのジャーナルクラブということで開始前からすごい熱気です。
IMG_9738
まずは志村先生による弘岡先生の同級生であるSerino先生のスウェーデンの専門病院におけるインプラント周囲炎治療後の10年フォローアップ論文をスマートに解説していただきました。
この論文は、抗炎症外科療法後2年、5年後の論文に続き発表された10年後の追跡調査になります。
病気に罹患していないインプラントは当然健康が維持されましたが、抗炎症外科療法の後も予後が悪かったインプラントであっても、定期的なSPTにより多くのインプラントが保存されることがわかりました。
IMG_9745
そのまま弘岡先生がSerino先生とのzoom対談により得た論文の背景などをインタビュー動画も見ながら講義しました。
IMG_9752
安定の羽岡先生にはWennstromらの非外科処置における、超音波スケーラーによる全顎1回でのデブライドメントと、手用スケーラーによる全顎4分割の効果を比較したゴールドスタンダード論文の続きとなる、Tomasi らの1-year follow-up論文を泥臭く解説していただきました。
これまでの論文と同様、手用スケーラーと超音波スケーラーで治療結果に差はないですが、超音波スケーラーの方が治療時間は短縮されます。
この論文の被験者は最初からプラークコントロールが良いので、被験者のセレクションは行われているのでしょう。臨床の現場では患者の状況に応じて適切に手用スケーラーと超音波スケーラーを使いましょう。
IMG_9747
ケースプレゼンテーションは沼尾先生による専門医所得されたケースとチャレンジングなケースの2症例をみせていただきました。さすが専門医!参加者の刺激になったでしょう。

やはり顔を合わせるとディスカッションも盛り上がります。
久しぶりの懇親会も静かに行いました。

来年度こそは対面でのジャーナルクラブが定期開催できることを楽しみにしております。
  • Posted by sweden_dc
  • Comment(0)
  • 10:21 | Edit

ジャーナルクラブ:インプラント上部構造のエマージェンスプロファイル

2020年度3回目のジャーナルクラブを開催しました。
IMG_5245
インプラント上部構造の形態がインプラント周囲炎のリスクインジケーターになるのか?
Yiらの2020年の論文を目白で開業されている藤澤先生に抄読していただきました。
L1090588
結果は、2018年のKatafuchiらの研究と同様に、インプラント上部構造のエマージェンスアングルが30°以上であることや、凸形態であることがインプラント周囲炎のリスクインジケーターになり得るとしています。
この論文ではレントゲン写真からインプラント上部構造のエマージェンスプロファイル、エマージェンスアングルを計測し、その角度や形態とインプラント周囲炎との関連を調べています。しかし、レントゲン写真では近遠心側の計測しかできず、頬舌側の計測はできません。また、レントゲンでは軟組織辺縁が測定できないため、実際のエマージェンスプロファイルと一致しているかは不明です。
天然歯での研究では、Yotnuengnitらのように石膏模型の断面から頬舌側のエマージェンスアングルを計測しているものもあります。
この研究は、プラークコントロールの良好な患者群が対象ですが、対象インプラント自体のプラークスコアは記載されていないため、インプラント上部構造形態がプラークコントロールに影響を及ぼしたことで、インプラント周囲炎の罹患率に差が出たのかは明確ではありません。しかし、多くのインプラント周囲炎は細菌性プラークにより引き起こされる疾患であるため、上部構造には磨きやすく、また、病気を早期に発見できるようにプローブによる検査ができるような形態を付与することが重要なのではないでしょうか。
疑問点は多いですが、ディスカッションの良いネタになりました。
L1090589
Baderstenの1984年のゴールドスタンダード論文を春日部で開業されている吉田先生に抄読していただきました。
分岐部は対象にしていない研究ですが、プラークコントロールがよく、単根歯であれば、かなり深い歯周ポケットにも非外科処置で対応できる可能性や、超音波スケーラーと手用スケーラーで治癒に有意差ないこと、3mm以下の歯肉溝へのスケーリングはアタッチメントロスを引き起こすことなどを示唆した、マイルストーンたる論文です。
プラークコントロールを良くするための方法はPart Ⅰを参照しましょう。
35年前の論文ですが、現在でも原理原則は変わっていません。ただ、器具は変わっていくので注意は必要です。
弘岡先生によると、著者であるBaderstenは、あのProf. Egelbergの実の妹だそうです!
Prof. Egelbergの講義は科学的根拠に基づく素晴らしいものだったそうです。
L1090586
今年、歯周病専門医を所得された鄭先生の症例発表は口腔内写真も美しく、流石にスマートでした。
次回は11月12日開催予定です。
  • Posted by sweden_dc
  • Comment(0)
  • 17:58 | Edit

2020年度第2回ジャーナルクラブ

今年度2回目のジャーナルクラブは、コロナ禍ということもあり、いつもより広い高級な会議室を借りて、世界でも類を見ないソーシャルディスタンスを確保しながら慎重に開催いたしました。
IMG_1685
冨岡先生には歯間部プラークコントロールのメタレビューを、マニアックに解説していただきました。さすがのイエテボリグループならではの的確な解説でした。忙しい中、おまけのスライドまで用意していただき、難しい論文を猿でもわかるように説明してくれました。
IMG_1686
ケースプレゼンテーションは、千葉県で開業されている加藤先生によるマイクロスコープを用いた非外科処置症例を提示していただき、ディスカッションを行いました。
IMG_4528
そして、スウェーデンデンタルセンター副院長による論文抄読では、こんなご時世にわざわざ参加してくれた方々が、地球に生まれたことを感謝するような、そんなマーベラスな時間を過ごせました。

参加者の歯間部プラークコントロールに関する知識は爆上がりし、目は血走り、興奮のあまり夜も眠れなかったことでしょう。

最後は恒例の弘岡先生による総括で、ケースを提示しながら何か喋ってました!
  • Posted by sweden_dc
  • 11:46 | Edit

夢の新規歯周病治療器発表!!

1月25日に今年度5回目のJournal Clubが開催されました。
Journal Clubとは弘岡先生が主催する20年以上続く文献抄読会です。
IMG_2159
今回はゲストとして先日"Nature"に論文が掲載された東北大学大学院歯学研究科(http://www.dent.tohoku.ac.jp/field/cooperation/01/index.html)の菅野太郎教授をお招きして、菅野教授グループが長年研究しているラジカル殺菌技術を用いた新規歯周病治療器に関する自身の論文について、さらにはまだ発表前のデータや今後の展開について講演していただきました。
この研究には菅野教授と弘岡先生の古くからの良好な関係もあり、歯周病治療の専門家である弘岡先生もアドバイスをしています。
IMG_2154
歯周病などの口腔内の疾患の多くは細菌が原因なので、殺菌技術に関する数多くの研究があります。その中でも菅野教授グループらのラジカル殺菌技術は、殺菌消毒液や光殺菌治療などと比較して殺菌効率が良く、なおかつ安全性も高いものとのことです。そのラジカル殺菌技術を従来からの超音波を用いた歯周病治療器に組み込むことにより機械的な感染の除去に加え、同時に化学的な殺菌をまでも行ってしまう強力な治療器になるそうです。これにより歯周病治療がより簡単に、そして今までよりも重度の歯周病罹患歯の保存的治療の適応症が拡大するかもしれません。
2020年の実用化を目指し治験はすでに実施済みであり、有効性と安全性が実証されているとのことです。実用化しましたら真っ先に我々のグループで使用していくことになりそうです!新規治療器具開発がいかに大変か、そして多くの障害を乗り越えるための努力を垣間見ることができました。日本発の歯周病治療器が世界の歯周病治療に変化をもたらすことができるのか楽しみです。
L1180030
また、症例のプレゼンテーションはスウェーデン・イエテボリ大学歯周病科における弘岡先生の後輩である冨岡先生(https://tomioka-dental.com)と歯周病学会専門医である宮澤先生(http://miyazawa-shika.pepo.jp)によるもので、どちらも一流歯科専門誌である"歯界展望"のシリーズ"天然歯を守る"に掲載されたケースの発表でした。
歯を残すことにこだわり再生療法も用いた長期症例でした。多くの歯科医院では早々に抜歯されてしまってもおかしくない歯を、再生療法も含めた的確な治療と長期にわたる定期的なサポーティブセラピーにより保存した10年を軽くこえる長期症例は説得力がありました。
歯を保存することへのチャレンジを後押ししてくれるようなプレゼンテーションにみなさん安心したのではないでしょうか。
  • Posted by sweden_dc
  • Comment(0)
  • 14:01 | Edit

2014Journal Club 5th

先日Journal Clubがありました。
内容は下記の通り。 
1.冨岡栄二先生症例発表
2.論文抄読;宮澤 進 先生
Patients views on periodontal disease; Attitudes to oral health and expectancy of periodontal treatment: A    qualitative interview study. Kajsa H Abrahamsson/ Jan L Wennström/   Ulrika Hallberg
3.論文抄読;天野 大地 先生
Patients attitudes towards oral health and experience of periodontal treatment a qualitative interview study. 
Jane Stenman/ Ulrika Hallberg/ Jan L Wennstrom/ Kajsa H Abrahamsson 

冨岡先生の症例発表は前回の続きです。
Lindhe 先生とNevins先生に頂いたコメント付きで症例発表をして下さいました。贅沢です。
ポイントは、ずばり外科処置の基準です。Kajsa Abrahamssonの報告でもありますが、外科処置は患者さんとしては避けたい治療方法である事に違いはありません。なんといっても外科処置ですから、恐いのは皆さん一緒です。無駄な外科処置は避け、出来れば非外科処置で対応したいのは患者さんの希望でもあります。
しかし、非外科処置にも限界はあり、だからこそ外科処置という選択肢が存在するのです。その基準に関して、Lindhe 先生とNevins先生のコメントをつけて解説して下さいました。
IMG_1971
外科処置の基準とは。明確な基準があった方がわかりやすいですが、術者、患者、患歯によって状況が異なるため、画一的な基準を設ける事は難しい。
そして文献はKajsa Abrahamsson先生の論文です。3月に招待講演を企画していますので、それに向けて会員で抄読しています。が、とても難しいです。というのは、Kajsa先生の論文は、歯科治療と患者心理をつなげる研究であり、この心理に関する文献が読み慣れていないため、なかなかに大変です。
ここからは個人的な見解です。
人の心理を客観的に評価する事は難しいです。しかし、人の心理が治療に与える影響は非常に大きく、特に歯科治療は患者の口腔衛生なくして良好な結果は得られないため、いかに患者さんのモチベーションを引き出すかが治療の成否を大きく分けます。ゆえに、客観的評価が出来ないからと言って、患者の心理は治療を考える上で無視できないのです。
歯周治療に関する文献の多くは、患者の良好な口腔衛生が大前提となっており、それはある種のバイアス(偏り)が生じている、と評される事もあります。つまり、実際の臨床では、口腔衛生の良い患者ばかりではない、と言いたいのです。
患者のモチベーションを引き出す事は良好な予後に欠かす事が出来ないのなら、なんとかそれを引き出す方法を客観的に導きだす事が出来ないか。長くなりましたが、それに迫る研究だと言えます。

IMG_1979
 研究手法の説明を聞いていますが…難しい。

そして、研究手法にはGrounded Theoryというものを使用しています。正直、専門の人間がいないのでみんな手探りです。しかも英語なのでチンプンカンプン。
またまた個人的見解です。
今回の文献は、患者のインタビューを集め、客観的に人の心理を評価しているのですが、1つのストーリーにはいくつもの解釈が存在します。それでは、評価者が変われば結論も変わってしまいます。
では、ストーリーを文章に分解し、1つの文章に注目します。ストーリーよりも解釈の仕方は限定されるでしょう。さらに、 今度は文章を単語に分解し、1つの単語に注目します。単語の解釈は文章よりもさらに限定され、評価者間による差が小さくなるように思います。
こうしてインタビューを分解していく事により、出来るだけ客観性を保ったまま、結論を導きだす手法。そんな理解で僕はいます。合っているかはわかりませんが。

夜は懇親会。頭をたくさん使ったので、リフレッシュが必要ですね!
次回もがんばっていきましょう。

IMG_1994
最後はいつもの様に反省会。次回はKajsaの文献3つです。がんばりましょう! 
  • Posted by sweden_dc
  • Comment(0)
  • 00:09 | Edit
  • ライブドアブログ
日比谷便り ~スウェーデンデンタルセンター オフィシャルブログ~